후리가나로 읽는 일본 고전
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おおいがわおくやまのはなし
大井川奥山の話
木暮 理太郎
木暮 理太郎의 大井川奥山の話(おおいがわおくやまのはなし)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 9,724자 · 20화면
驚いた私よりも更に驚いたらしい羚羊はぐるり踵を返して、元来た方に駈けて行く。下ってまた上り、一小隆起を踰えて、兀々した嶄岩の上に攀じ上ると、そこが大沢岳の頂上であった。信州側は絶崖が続いているらしいが、覗いて見ても西から吹き寄せる霧の渦巻に遮られて、先までは目がとどかない。右手の谷底から赤石沢の水音が聞えて来る。もう六時を過ぎているので、休みを除いても今朝から十一時間は歩いている。漸く疲れを感じて楽しい野営地を想像している身には、それは眠りを誘う子守謡のように懐しく響いた。
又一峰の上りに懸って足早に辿って行くと、上から羚羊が下りて来た、五、六間の距離で立ち止って私と向い合ったまま暫く躊躇していたが、断念したように身を反して、おりた路を上って行った。私一人は其跡に踉いて進みながら、人夫は此処から赤石沢の水源池である百間洞に直行させて、暗くならない中に野営の用意をさせることにした。更に一峰を踰えて暫く行くと、右手に無数の偃松の枯骨が白くされている斜面に出た。踏むとポキポキ音がする。赤石岳の一角が入日を受けてパッと金茶色に燃え立った。夫も間もなく消えて、夕闇の罩めた谷間に焚火の光が見え出すと、木を伐る音が丁々と聞えて来る。