후리가나로 읽는 일본 고전
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てんしゅかくのおと
天主閣の音
国枝 史郎
国枝 史郎의 天主閣の音(てんしゅかくのおと)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 38,941자 · 79화면
ひとつ別嬪を呼びやしょう」
云い乍ら香具師は手を延ばし、背後の壁の一点へ触れた。と其処へ穴が開き、一人の女が現れ出た、全身がブルブル顫えていた。その歩き方も不自然であった。
「お花さんえ、さあお坐り」ポンと香具師は畳を打った。同時に女はベタリと坐った。その坐り方も不器用であった。
そこで九兵衛は眼を据えて、じっと女を観察した。何んのことだ人間では無い。木で作った人形なのであった。
「お目見得は済んだ。帰ったり帰ったり。」復もやポンと畳を打った。その拍子に立ち上り、女は壁の方へ辷って行った。そうして元の穴へ身を隠した。と音も無く壁が閉じた、糸筋ほどの継目も見えない。
「おっ、畜生! 来やがったな!」どうしたものか香具師は、俄に叫ぶと居住居を直し、煙突形の円筒へ、斜めに篏め込まれた鏡面をグッとばかりに睨み付けた。驚いた九兵衛も首を延ばし、これも鏡面を覗き込んだ。
何が其処に写っていたか? 紫陽花色の月光が、鏡一杯に溢れていた。その中に一人の人間が、首を傾げ乍ら立っていた。それは戸外の光景であった。鏡に写った人物は、八十余りの老人で、胴服を着し、伊賀袴を穿き、夜目に燃えるような深紅の花を、一茎右手に持っていた。