후리가나로 읽는 일본 고전
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
野村 胡堂의 奇談クラブ〔戦後版〕(きだんクラブ〔せんごばん〕)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 11,954자 · 24화면
南郷綾麿の観音像に対する愛着も、まさにこれだったのです。七歳の時観音様と頬摺りしてから、十五六歳までは、忘れるともなく忘れて居りました。生理的には肉体の完成に忙しく、そして精神的には他愛もない遊びと此頃の人らしい勉強に紛れて、暫くは天狗長兵衛作の観音様も、綾麿の記憶の下積になって、僅かに埋み火のように息づいていたのでしょう。
その埋み火が、新に薪を添えられて、燃えさかる情熱となったのは、綾麿が十七の年、声変りがして、鼻の下が薄黒くなって、理性と情慾と、信仰と迷信と、渦を巻いて五体を駈けめぐり始める頃でした。
その頃は江戸が東京に変り、廃刀令が布かれ、丁髷が無くなり始めて、物皆新時代の歯車の上に、活溌に回転し始めた時分のことです。南郷綾麿は町内の若い男女五六人と、その頃流行った「一瓢を携えて」亀井戸の臥龍梅を見、少し廻り道をして、五つ目の羅漢寺に詣で、蠑螺堂の回廊をキャッキャッと騒ぎながら登ったのは、最早夕景近くなってからでした。
一行の中には元は何十石取の御家人で、南郷綾麿の隣に住み、母と一緒にささやかな手内職をしている、花崎某の娘香折も交って居りました。