후리가나로 읽는 일본 고전
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
野村 胡堂의 奇談クラブ〔戦後版〕(きだんクラブ〔せんごばん〕)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 11,195자 · 22화면
志津子夫人の幼な友達で、その頃伊太利から帰ったばかりのバリトン歌手、千束守が喜田川家に出入するようになったのも、志津子夫人の我儘な願いが叶えられた為であったでしょう。千束守はかなりの歌手で、喜田川三郎氏に比べると年も若く、第一南欧で長い間磨き抜いて、申分のない男前でもありました。
醜い中老人で、金より外に頼るものの無い喜田川三郎氏が、美しい夫人の側へ、人気者のバリトン歌手を近づけるのは、勿論嫌でたまらなかったに違いありませんが、我儘一パイな志津子夫人の機嫌を取って、その燃え付くような魅力的な笑顔を見るためには、千束守は愚か、アラビヤ夜話の淫蕩な魔王でも喜んで近づけるより外には工夫もなかったのです。
志津子夫人は展望台の出張りに三脚を持出して、海の絵を描く、その傍で千束守が、海気を肺臓一パイに吸って、南の国の歌を歌う、――それを御主人の喜田川三郎氏が、面白くも無い精神修養の本を読み乍ら、眼の隅から二人の様子を眺め眺め、書斎の窓際の安楽椅子に凭れている――こんな日は幾日も続いたのです。
千束守はその道の猛者ではあり、歌よりも恋の狩人として有名でしたが、伊太利から帰って間もなく、フトした機会にこの素晴らしい幼な馴染の志津子婦人に迫り逢ってからは、身も世も忘れた姿で、志津子夫人に夢中になって居りました。