후리가나로 읽는 일본 고전
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あるおんなのしょうがい
嵐・ある女の生涯
島崎 藤村
島崎 藤村의 嵐・ある女の生涯(あるおんなのしょうがい)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 47,846자 · 96화면
丁度そこへ例の奥様も顔を見せた。
「これが弟でございます」
とおげんは熊吉が編上げの靴の紐を結ぶ後方から、奥様の方へ右の手をひろげて見せた。弟が出て行った後でも、しばらくおげんはそこに立ちつくした。
「きっと熊吉は俺を出しに来てくれる」
とおげんは独りになってから言って見た。
翌朝、看護婦はおげんのために水薬の罎を部屋へ持って来てくれた。
「小山さん、今朝からお薬が変りましたよ」
という看護婦の声は何となくおげんの身にしみた。おげんは弟の置いて行った土産を戸棚から取出して、それを看護婦に分け、やがてちいさな声で、
「あの奥様の連れている犬が、わたしは恐くて、恐くて」
と言って見せた。看護婦は不思議そうにおげんの顔を眺めて、
「そんな犬なんか何処にも居ませんよ」
こう言って部屋を出て行った。
その時の看護婦の残して行った言葉には、思い疲れたおげんの心をびっくりさせるほどの力があった。
「俺もどうかしているわい」
思わずおげんはそこへ気がついた。しかし、あんなことを言って見せて悪戯好きな若い看護婦が患者相手の徒然を慰めようとするのだ、とおげんは思い直した。あの犬は誰の部屋へでも構わず入り込んで来るような奴だ。