후리가나로 읽는 일본 고전
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あいのごとく
愛のごとく
山川 方夫
山川 方夫의 愛のごとく(あいのごとく)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 103,908자 · 210화면
「黒の女」は二度目のステージの途中に来た。彼女はステージに向って右手の――つまり、右袖でドラムを打つ信二にほとんど五六米の距離しかない、とっつきのテーブルに席をとった。信二は胸をときめかせた。たぶん特別に早い客足がホールをはやく満員にしたためだろうが、彼女がそんな近くに席をとってくれたことはなかった。めずらしく彼女は踊る人びとに明るい笑顔を向け、両手で拍子をとるように皆といっしょに拍手をする。横にいつもの伍長が坐っていた。
信二は顔を伏せた。いつもの、彼女を見るたびに彼を拘束する絶望が、またも彼をとらえていた。彼女の肌を想うのには、彼女は見えていてはならなかった。乳房や尻や肌、性器としての女よりも、見えながら隔てられているものとしてその「黒の女」に、より貴重なもの、より熱意を向けうるもの、より恋をささげている自分がわかってくる気がする。臆病であり、幼さであり、逃避であり、不健康な夢への固執かもしれない。しかし信二は彼女をみて、化石したように自分が一箇の冴えた空白に占められて行く愉悦、充実した空白そのものに化して行く快感を捨てることはできなかった。