일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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あるおとこのしゅき

或る男の手記

豊島 与志雄

豊島 与志雄의 或る男の手記(あるおとこのしゅき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 43,279자 · 86화면

아오조라 문고

そこへ松本がふいに姿を現わした。彼は座敷へ通されるのを待たずに、私達がいる茶の間の方へ自分からやって来た。その自信ありげな露わな眼付を見た時、私の気持に不思議な変化が起った。今までもやもやと立罩めていた霧が急に霽れて、自分の周囲がぱっと明るくなったような心地だった。そして私の頭には、三人の子供を隣室に遊ばせ、台所に女中を控えさし、妻を側に坐らして、その真中に納まりながら――何の能もない自分が家庭という巣の中に納まり返りながら、酒にほてった赤い顔をし、額に泰平無事の快い汗をにじまして、ちびりちびり晩酌をやってる、おめでたい自分の姿が、一瞬の間はっきりと映ったのである。それは単にその晩だけの姿ではなくて、これまでの良い家庭生活を通じての、総括的な自分の姿だった。私は突然或る反抗心に駆られて苛立ったが、それに光子のことがからまってきて、次の瞬間には、反対にぐっと皮肉に落着いてしまったのである。

松本は私に一寸挨拶をしておいてから、いきなりこう云い出した。

「奥さん、光子さんは帰っていますよ。」

それを聞いて、俊子が変にぎくりとしたことを、私は後になって思い出した。