후리가나로 읽는 일본 고전
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
横光 利一의 旅愁(りょしゅう)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 576,941자 · 1138화면
「もうこれでいいんでしょう。」
と初めて一人が言葉を云った。まだ何かしなければならぬことが、沢山残っているような気のしているときとて、
「ええ、もうこれで、ただ乗ってらっしゃれば、パリまで行きます。」
と案内人は笑って答えた。
「じゃ、昨夕のことをそろそろ話し合おうじゃないか。」
と一人が云うと、皆は漸く安心した気楽さに返って、見て来たマルセーユの夜街の面白さを話し始めた。しかし、それらの話は誰も面白かった。それだけどこか面白くなかったという表現をするのであった。
「あなたはどうだった。」
と久慈は矢代に笑って訊ねた。千鶴子と二人ぎりでいた船内のことをひやかしたのだとは一同すぐ感じたらしく、皆矢代の方を向いた途端に汽車はパリへ向って出発した。
「僕もなかなか面白かったな。」
と矢代は久慈の先手を打ったつもりであったが、駅を出た野の美しさに、もう人人は耳を傾けようともしなかった。昨日ノートル・ダムの上から見た半島が現れ、丘が見え、海が開けて来るに随って、だんだんマルセーユは遠ざかっていった。
杏の花の咲き乱れている野、若芽の萌え出した柔かな田園、牧場、川と入れ代り立ち変り過ぎ去る沿線の、どこにもここにも白い杏の花が咲き溢れて来て、やがてローヌ河が汽車と共にうねり流れ、円転自在に体を翻しつつもどこまでも汽車から放れよ