후리가나로 읽는 일본 고전
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
横光 利一의 旅愁(りょしゅう)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 576,941자 · 1138화면
「しかし、仕方がないじゃないか。今はこっちさ。」
と矢代は外の千鶴子に云いきかせるように胸中でたしなめ、
「実際そうだよ。」
と、思わずそんな叱る言葉もつづいて出た。が、それだけはうっかりして口から洩れたらしく、箱の中の千鶴子は聞き咎める眼でふり向いた。
「何に?」
「いや。妙なところだ、ここ。」
軽く彼は反らしたがひやりとして、自分のひそかな喜びを人に感じられては一大事だと、咄嗟に彼は現前の橇の中の自分に立ち戻るのだった。
「この山を廻ると、向うの高台に火が見えますよ。それが宿だ。僕の小屋はそれから少し上の方になるんだが。」
矢代はそう云いながらも、傍でさきから黙っている槙三が何んとなく気味悪かった。しかし、矢代は自分がひとり不正な快感に耽っているのでは少しもないと思った。人に知られては困ることにちがいなかったが、自分の丹精こめて愛したものが、愛しただけ自ら別の姿となって自分に現れ分るだけのことであり、そのどこに不思議なことがあるものかと、向き直る度胸も出るのだった。もしそれが人に分れば千鶴子にだって、僕の想っている千鶴子は君じゃないよ、もっと君から抽象した人だと、云うだけの準備も胸中で出来ていた。