후리가나로 읽는 일본 고전
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ははのじょうきょう
母の上京
坂口 安吾의 母の上京(ははのじょうきょう)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 16,655자 · 33화면
そして彼は近頃では、部屋の中では、たゞ眠ることしか考へなくなつてゐた。そして、眠るといふ喜びのために、目ざめてゐるときの色々の煩しさや薄汚さを気にもかけずにゐられるやうな気持であつた。
夏川は寝床の中の女にはまだ我慢ができた。第一、くらやみだ。何も見えないし、そして喋らずにもゐられるからだ。苦しいのはヒロシと三人食事の時やお茶を飲んだりする時で、このときの婆アさんはハッキリ見えるばかりではない。情慾のみたされてゐる自らをさもさも得意に、ヒロシをからかひ、苦しめはじめる。今夜は休業? と言つてみたり、たまには石の上にも寝なきや一人者は身体がもたないだらうにね、などゝ言つたりする。富める者が富める如くに、才ある者が才ある如くに、自らの立場をひけらかすに比べて、肉慾のみたされたる者がたゞその肉慾のみたされたる故に自らひけらかすといふことは、理知のよく正視に堪え得るものではない。しかもそのみたされたる肉慾の片われが汝自らであるときては、その寂寞、その虚しさ、消え得るならば消え失せて風となつて走りたい。すべてはあるがまゝ夢である故、彼はつとめて女を憎み呪はぬやうにしてゐるのだが、ヒロシの切なさを我身の切なさの如くに考へることが多かつた。