후리가나로 읽는 일본 고전
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むげつものがたり
無月物語
久生 十蘭
久生 十蘭의 無月物語(むげつものがたり)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 18,485자 · 36화면
北ノ坪で召次をしている犬養ノ善世という下部は、卯ノ花の汗衫を着てとぼけているが、首筋は深く斬れこんだ太刀傷があり、手足も並々ならず筋張っていて、素姓を洗いだせば、思いがけない経歴がとびだしそうな曰くありげな漢だった。暴れだせばむやみに狂暴になる泰文が相手では、どのみち女だけの腕で仕終わせるのぞみはないから、公子は善世を手なずけてみようと思いついた。
善世は眼の色を沈ませていつもむっつりと黙りこみ、なにを考えているのかわからないような陰気な男で、うちつけにそういう大事を洩らすのはいかがかと思われたが、ほかに助けとてもないのであるから、ある日、ままよと切りだしてみると、意外なことに、すぐ同腹してくれた。
犬養ノ善世はもとは鬼冠者といい、伊吹山にいた群盗の一味で、首の傷こそは、五年ほど前、山曲の暗闇で泰文とやりあい、腰刀をうちこまれたものだということだった。こうして沓石同然の下司の役に甘んじているのは、いつかは怨みをはらしてやろうという鬱懐によることである。あなたさまがたにたいする大蔵卿の仕打ちは、かねがね私めも腹にすえかねていた。そういう存念があられるなら、どのようにもお手助けすると、キッパリとした返事であった。