일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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ぎせいしゃ

犠牲者

平林 初之輔

平林 初之輔의 犠牲者(ぎせいしゃ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 18,364자 · 37화면

아오조라 문고

今村の両手はいつのまにか捕縄でかたく縛られていた。

彼は命令された通り、だまってついてゆくよりほかはなかった。自分の意志を全く失ってしまって、他人の命令に絶対服従する気持には一種の快感が伴うものだ。今村が、恐れとか怒りとかいう感じをその時さらに感じなかったのは極めて自然であると私は思う。貪慾な所有者は家宝の花瓶に少しくらい疵のついた時には、くやしくて、残念で、二晩や三晩は眠れないかも知れない。けれども、此の花瓶が、超人の手によって、百尺の高さから、花崗岩の庭石の上へ投げつけられ、物の見事に文字通り、粉微塵に破壊されたらどうだろう。どんなに貪慾な人間でも、その時は、一時、残念とかくやしいとかいう生やさしい心境を超脱してしまうに相違ない。

彼は、さも愉快そうにげらげらと笑い出すかも知れない。無限の両端は一致するという真理には例外はないのだ。

この刹那の今村の心理状態を学者が分析するなら、命よりも大切にしていた家宝の花瓶を、一思いに粉砕された刹那の所有者の心理状態との間に、少なからぬ共通点を見出したことであろう。

彼は、刑事がするがままに、外套と上着と短衣と洋袴との衣嚢をのこらず裏返して紙屑一つあまさず所持品という所持品を悉く没収された。