후리가나로 읽는 일본 고전
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いちろうじん
犬田卯短編集二
犬田 卯
犬田 卯의 犬田卯短編集二(いちろうじん)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 51,383자 · 103화면
二
全身中どこを探して見ても無いと知って、しばし茫然として突っ立っていたが、やがて彼女は道を引返しはじめた。どこか途中に落ちているに相違ない。人が通るとはいっても、たいがいは自転車で飛ばすものばかりである。でなければトラックだ。小さい蟇口などよほど気をつけていなければ眼にとまるはずがない。国道へ出てから落したものなら、まだ落ちたままで、落し主が探しにやってくるのを待っていてくれるであろう。商人が座敷に座ったままでいて儲ける金とは、同じ五円でも、あれは違っていなければならぬ五円のはずだ。それにあの蟇口の片隅には自分の小さい写真が二三枚入っていたのだし、あの写真がしっかと紙幣を握っていてくれるであろう。お通は全神経を路上に集中して、ちょっとした木片、一個の石塊にも眼をそそぐことを忘れず、ずっと自分の歩いた辺を戻って見た。が、部落への曲り角まで、そこにはついに落ちていなかったのである。おそらくここまで来るうちに――家を出て五六軒の農家のならぶ往還を通り、畑地へ出て、沼岸へ坂を下りる頃落したのかも知れぬ。彼女はそう考え直して、今度は村道を注意ぶかく探しながら坂を登り、部落へ入って、そしてとうとう自分の家の門口まで来てしまった。