후리가나로 읽는 일본 고전
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いちろうじん
犬田卯短編集二
犬田 卯
犬田 卯의 犬田卯短編集二(いちろうじん)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 51,383자 · 103화면
仙太もその空気に捲き込まれ、しばらくの間は夢中になって勝負を眺めていた。が、そのうちにいくらか冷静になった。ひょっと気がつくと、彼は勝負ごとに、自分が勝つと思った馬がいつも勝っていることに気がついた。――今日は運がいいぞ、畜生! 悔しさがもうむらむらと頭をもたげてきた。何故今の今、その勝負の馬券を買っていなかったのかと、そんなことが後悔されはじめた。彼は再び人混みを分けて馬券売場の方へ近づいて行った。見るとそこには勝負ごとに、熱狂し狂乱して、押し合い、へし合いしている人間の黒山、潮の差し引きがあった。勝った人間の顔は汗と埃りにまみれながらも太陽の如くかがやいていた。負けた人間のそれは瀕死の病人のように蒼ざめて、秋の木の葉のようにぶるぶるとふるえていた。
仙太は例の五円のぼろ札を手づかみにして突っ立っていたが、容易に売場へ近づくことが出来ないとともに、一方にはその負けた人間の顔が、自分自身の顔でもあるかのように怖ろしくなってきていた。
――そうだ、もしひょっとして……たとい運のいい日であったにせよ、一度や二度は負けないとも限らない。負けてこの五円すってしまったなら?……