후리가나로 읽는 일본 고전
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ことのそらね
琴のそら音
夏目 漱石의 琴のそら音(ことのそらね)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 20,985자 · 42화면
竹早町を横ぎって切支丹坂へかかる。なぜ切支丹坂と云うのか分らないが、この坂も名前に劣らぬ怪しい坂である。坂の上へ来た時、ふとせんだってここを通って「日本一急な坂、命の欲しい者は用心じゃ用心じゃ」と書いた張札が土手の横からはすに往来へ差し出ているのを滑稽だと笑った事を思い出す。今夜は笑うどころではない。命の欲しい者は用心じゃと云う文句が聖書にでもある格言のように胸に浮ぶ。坂道は暗い。滅多に下りると滑って尻餅を搗く。険呑だと八合目あたりから下を見て覘をつける。暗くて何もよく見えぬ。左の土手から古榎が無遠慮に枝を突き出して日の目の通わぬほどに坂を蔽うているから、昼でもこの坂を下りる時は谷の底へ落ちると同様あまり善い心持ではない。榎は見えるかなと顔を上げて見ると、あると思えばあり、無いと思えば無いほどな黒い者に雨の注ぐ音がしきりにする。この暗闇な坂を下りて、細い谷道を伝って、茗荷谷を向へ上って七八丁行けば小日向台町の余が家へ帰られるのだが、向へ上がるまでがちと気味がわるい。
茗荷谷の坂の中途に当るくらいな所に赤い鮮かな火が見える。前から見えていたのか顔をあげる途端に見えだしたのか判然しないが、とにかく雨を透してよく見える。