후리가나로 읽는 일본 고전
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やのしのとい
矢押の樋
山本 周五郎
山本 周五郎의 矢押の樋(やのしのとい)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 14,468자 · 29화면
一
一
「あれはなんだ、衣類のようではないか」
外村重太夫は扇子で陽を除けながら、立停って顎をしゃくった。城の内濠の土堤の上に、衣服と大小がひと束ねにして置いてある、六月早朝の大場は、ぎらぎらと刺すような烈しい光を射かけているが、まだ四方には人の姿も見えない刻限だった。
「加兵衛、此処へ持って来てみい」
「はっ」
供の者が直ぐに登って、衣服と大小を抱えて来た。……すると、それをみつけたのであろう、土堤の向うから慌てて呶鳴る者があった。
「おい、それを持って行っては困るぞ、持主は此処にいるんだ、返して呉れ」
「……誰かおります」
加兵衛が窺うように見上げると、重太夫は身軽に土堤へ登って行った。……内濠の水面にぽかりと頭を浮かして、一人の若侍が泳いでいるところだった。顎骨の張った、眉の太い眼の大きな、そして全体にどこか剽軽た印象を与える顔だちをしていた。
「不届者、なにをしておる」
重太夫が大声に叫ぶと、若者はあっと大きく眼を瞠った、相手が勘定奉行だということを認めたらしい、ひょいと頭を下げるような身振をしたと思うと、そのままずぶりと水の中へ潜ってしまった。土堤の上から濠の水際までは急斜面で二十尺ほどもある、だから重太夫の立っている場所からは、広い濠の水面が隅々まで一望だった、それにも拘らず、いちど水中へ沈んだ若者はなかなか