후리가나로 읽는 일본 고전
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かいだんいちやぞうし
綺堂随筆 江戸のことば
岡本 綺堂
岡本 綺堂의 綺堂随筆 江戸のことば(かいだんいちやぞうし)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 13,152자 · 27화면
ここらの漁船はみな洲崎の沖に出ていたが、海の上は夜よりも暗い濃霧にとざされて、水に馴れている漁師たちも櫓や櫂を働かせるすべを知らなかった。度胸をすえて落ちついているのもあれば、どうかして漕ぎ抜けようと迷いに迷っているのもあった。重兵衛もその一人で、かれは自分ひとりで小舟を漕ぎ出していたが、あせりにあせってこの霧の海から逃がれようと、一生懸命に漕いでゆくと、方角をあやまって芝浦の方へ進んでしまった。それに気がついた頃には、霧も少しくはげかかって来たのであった。
陸の霧は海ほどではなかったが、それでも黒白もわかぬというような不安の状態が一時間あまりも続いた。それがようやく薄れて来て、あたりが自然の夕暮れのけしきに戻ったとき、重兵衛の家の入口に倒れているおせんの姿が見いだされた。おせんは再び顔や手に無数の掻き疵を負って、髪をふり乱して横ざまに倒れていたが、さらによく見ると、その喉笛は何物にか無残に食い破られていた。誰が見ても、もう助ける方法はないとあきらめたが、素足で門口まで這い出して倒れているのから想像すると、おせんは暗い霧のなかで何物にか襲われて、恐怖のあまりに、探りながら門口まで逃げ出したが、遂にそこでいたましい生贄となったらしい。