후리가나로 읽는 일본 고전
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スペインのこい
西班牙の恋
国枝 史郎
国枝 史郎의 西班牙の恋(スペインのこい)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 24,387자 · 49화면
私がその門を這入るや否や仔牛ほどもある西班牙犬のネロが眼早く見付けたと見えて、高く一声吠えながら私の足許へ走って来て、房毛で蔽われた横肚を私の膝へ擦りつけた。
其時石造の建物の、二階の窓の窓掛が、元気よく左右に開らいたかと思うと、漆黒の髪の毛で包まれた小さい可愛い女の顔が、私の方を透かして見た。それはカスピナの顔である。
「あら」
と、喜びに張ち切れそうな、カスピナの声が聞えたかと思うと、すぐ其顔は引っ込んだ。
彼女と私とは玄関で間も無く手と手とを握り合った。
「あら、あら、ほんとに帰ったのね。ほんとに帰っていらっしゃったのね」
彼女の声は情熱の為に胡弓の弦のように顫えていた。
「ええええ帰って来ましたとも。この通り帰って来ましたよ」私は彼女の情熱に若干圧倒されながら、情愛を籠めて斯う云った。
「どんなに私待ったでしょう」彼女の声は潤んで来た「お手紙一本くださらなかったのね」
「…………」ほんとに左様だ、この私は、彼女へもムリオへも誰一人へも一本の手紙さえ出さなかった。私には手紙さえ書けなかったのだ。私は熱病患者だったから、今でも矢っ張りそうなのだ。一切恋は熱病だ。