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さいかくとかがく
西鶴と科学
寺田 寅彦
寺田 寅彦의 西鶴と科学(さいかくとかがく)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 9,913자 · 20화면
また有名な「三人一両損」の裁判でもこれを西鶴に扱わせるとその不自然な作り事の化けの皮が剥がれるから愉快である。勿論これらの記事はどこまでが事実でどこからが西鶴の創作であるかは不明であるが、いずれにしてもこれらの素材の取扱い方に著者の心理分析的な傾向を認めても不都合はないはずであろうと思われる。
これらの心理的写実を馬琴や近松のそれと比べてみると後者の不自然さが目立って来るようである。後者等は大体において人間心理を伝統的理想の鋳型に嵌めて活動させているとしか思われないのに反して、西鶴だけは自分自身の肉眼で正視し洞察し獲得した実証的素材を赤裸々に記録している傾向がある。
西鶴の人間に関する観察帰納演繹の手法を例示するものとしてはまた『織留』中の「諸国の人を見しるは伊勢」に、取付虫の寿林、ふる狸の清春という二人の歌比丘尼が、通りがかりの旅客を一見しただけですぐにその郷国や職業を見抜く、シャーロック・ホールムス的の「穿ち」をも挙げておきたい。
科学者としても理論的科学者でなくてどこまでも実験的科学者であった西鶴が、また人間の経験の習熟練磨の効果を尊重したのは当然のことである。