후리가나로 읽는 일본 고전
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ふろをかうまで
風呂を買うまで
岡本 綺堂
岡本 綺堂의 風呂を買うまで(ふろをかうまで)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 2,387자 · 5화면
それでも新しい湯にほんのりと匂う柚の香は、このごろとかくに尖り勝なわたしの神経を不思議に和げて、震災以来初めてほんとうに入浴したような、安らかな爽かな気分になった。
麻布で今年の正月をむかえたわたしは、その十五日に再びかなりの強震に逢った。去年の大震で傷んでいる家屋が更に破損して、長く住むには堪えられなくなった。家主も建直したいというので、いよいよ三月なかばにここを立退いて、更に現在の大久保百人町に移転することになった。いわゆる東移西転、どこにどう落付くか判らない不安をいだきながら、ともかくもここを仮りの宿りと定めているうちに、庭の桜はあわただしく散って、ここらの躑躅の咲きほこる五月となった。その四日と五日は菖蒲湯である。ここでは都湯というのに毎日通っていたが、麻布のゆず湯とは違って、ここの菖蒲湯は風呂一杯に青い葉をうかべているのが見るから快かった。大かた子供たちの仕事であろうが、青々と湿れた菖蒲の幾束が小桶に挿してあったのも、なんとなく田舎めいて面白かった。四日も五日も生憎に陰っていたが、これで湯あがりに仰ぎ視る大空も青々と晴れていたら、更に爽快であろうと思われた。