일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

小栗 虫太郎의 黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 296,741자 · 584화면

아오조라 문고

円い光に映るものは壁面と床だけで何一つ家具らしいものさえ、なかなかに現われ出てはこない。が、そのうち右辺からかけて室を一周し終ろうとする際に、思いがけなくも、法水のすぐ横手――扉から右寄りの壁に闇が破れた。そして、そこからフウッと吹き出した鬼気とともに、テレーズ・シニヨレの横顔が現われたのであった。面の恐怖と云えば誰しも経験することだが、たとえば、白昼でも古い社の額堂を訪れて、破風の格子扉に掲げている能面を眺めていると、まるで、全身を逆さに撫で上げられるような不気味な感覚に襲われるものだ。まして、この事件に妖異な雰囲気を醸し出した当のテレーズが、荒れ煤けた室の暗闇の中から、暈っと浮き出たのであるから、その瞬間、三人がハッとして息を窒めたのも無理ではなかった。窓に微かな閃光が燦めいて、鎧扉の輪廓が明瞭に浮び上ると、遠く地動のような雷鳴が、おどろと這い寄って来る。そうした凄愴な空気の中で、法水は凝然と眼を見据え、眼前の妖しい人型を瞶めはじめた――ああ、この死物の人形が森閑とした夜半の廊下を。

開閉器の所在が判って、室内が明るくなった。テレーズの人形は身長五尺五、六寸ばかりの蝋着せ人形で、格檣型の層襞を附けた青藍色のスカートに、これも同じ色の上衣を附けていた。