후리가나로 읽는 일본 고전
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さぶ
さぶ
山本 周五郎
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N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 210,521자 · 415화면
「御用はそんなことですか」
「いけないか」
「私は風だの花の匂いなんかに用はありません、ほかに御用がなければ部屋へ帰ります」
褒賞の式だから岡安は麻裃に扇子を持っていたが、その扇子を半ば開き、ぴしりと閉め、栄二の言葉が聞えなかったような表情で、窓のほうへ眼をやった。
「おまえには興味がなくとも、秋の風はこのように秋らしく、爽やかに花の香を送ってくる」と岡安はゆっくり云った、「――だがこの風も、いちど怒りだすと暴風になって、家を吹きとばし波を巻き立て、けが人や死者までだすようなことになる、七月のあらしでこの島はめちゃめちゃにやられた、いまはおまえたちの力で、殆んど元どおりに建て直されたが、もしも人間があのように暴れたとしたらどうだ、風を罰する法はないが人間には掟というものがある」
「誰のためにです」栄二がするどく反問した、「強い者のためにですか弱い者のためにですか」
「世の中ぜんたいのためだろうな」
「あなたはご存じないんです」
「それをいちど話したかった、私はおまえのことを詳しく知っているのだ」岡安はやわらかな口ぶりで云った、「――おまえが怒るのも尤もだ、綿文のやりかたも悪いし、目明しの扱いかたもよくない、芳古堂にもほかにもう少し考えようがあったろうと思う、それは慥かにそのとおりだが、ここでひとつ運と不運ということを