후리가나로 읽는 일본 고전
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
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N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 74,725자 · 148화면
まだ急がないでもよう御在ます。」
清岡は振切って去るわけにも行かず、勧められるがまま老婆の寐起している下座敷に通り長火鉢の前に坐った。座敷は二階と同じく六畳ばかり。壁も天井も煤けて、床板も抜けた処さえあるらしいが、隅々まで綺麗に片づいていて、障子や襖紙の破れも残らず張ってあるなど、もし借手さえあればここも貸間にするのかとも思われるくらいである。床の間には一度も掛替えたことのないらしい摩利支天か何かの掛物がかけてあって、渋紙色に古びた安箪笥の上には小さな仏壇が据えられ、長火鉢にはぴかぴかに磨いた吉原五徳に鉄瓶がかかっている。こういう道具から老婆の年齢も大方想像がつくであろう。老婆が口ずから語る所によれば、日露戦争の際陸軍中尉であった良人が戦死してから、下女奉公に行ったり派出婦になったりまた手内職をしたりして、一人の娘を養育したが、その娘は幸いにも資産のある貿易商の妻になり、夫婦とも現在は亜米利加に居住していて、老婆には不自由のないように仕送りをしているとの事である。しかし人の噂では、娘からの仕送りは真実であるが、娘は始め西洋人の妾になり子供が出来てそのまま旦那の本国へ連れられて行ったのだともいう。