후리가나로 읽는 일본 고전
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ドグラ・マグラ
ドグラ・マグラ
夢野 久作
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N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 424,847자 · 824화면
「大塚警部……鈴木予審判事……いずれもこの事件に最初から関係しておられる方々で……」
正木博士は立ち上って二人の名刺を受取ると、如何にも気軽そうにペコペコと頭を下げた。
「私が、お召しに依って罷出でました正木で……生憎名刺を持ちませんが……」
警部と予審判事は一層威儀を正して礼を返した。
ところへ紺飛白の袷一枚を、素肌に纏うた呉一郎が、二人の廷丁に腰縄を引かれて這入って来ると、三人の紳士は左右に道を開いて正木博士に侍立した形になった。
呉一郎はその前に立ち止まったまま、黒ずんだ憂鬱な眼付きで室の中をマジリマジリと見まわした。その白い腕や首の周囲には大暴れに暴れながら無理に取押えられた時の擦り傷や、痣が幾個となく残っていて、世にも稀な端麗な姿を一際異様に引っ立てているかのように見える。その背後から二人の廷丁が揃って挙手の礼をした。
正木博士は目礼を返しつつ、葉巻の煙を長々と吹かし終ると、手錠のかかった呉一郎の両手を無雑作に取って引き寄せながら、顔と顔を一尺位に近寄せて瞳と瞳とをピッタリと合わせた。その瞳の底を覗き込みつつ何事かを暗示するかのように……又は呉一郎の眼の光りを、自分の眼の光りで押し返して、その瞳孔の底に押し込むかのように……。