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バルザックについてのノート
バルザックについてのノート
宮本 百合子
宮本 百合子의 バルザックについてのノート을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 4,421자 · 9화면
既に自然主義にはおさまれず、さりとて自身の伝統によって内田魯庵の唱導したような文学の方向にも向えず、新しい方向に向いつつ顫動していた敏感な精神の姿である。芥川の散文は教養のよせ木であり脆さが痛々しいばかりである。
最近十年間に登場した作家の多くが、散文から全く逸脱して小径を歩いているのも窮極は、精神の不如意と苦悩とによっている。故に壮健な散文家となる希望も、その苦悩そのものの火にしかないわけである。そしてこの苦悩の重圧は、人々をひしぐか鍛えるか二つに一つしか返事を出さない。
ツワイクがドストイェフスキー論の中に言っているとおり、
「ワイルドがその中で鉱滓となってしまった熱の中でドストイェフスキーは輝く硬度宝石に形づくられた。」
巨人の檻
バルザックは、徹底的に、雄渾に、執拗に人間生活の関係を描く作家であった。大抵の才能ならば、その白熱と混沌との中で萎えてしまいそうなところを、踏みこたえ、掌握し、ときほぐし、描写しとおしたところに、この巨大で強壮な精神の価値がある。文学史上の一つの定説となっているバルザックの情熱の追求、――悪徳も亦情熱の権化として偉大なものたり得る――ことを描いたのも、人間と人間との間のエネルギーの最大の集中の形として、関係の中におかれたのであった。