후리가나로 읽는 일본 고전
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ひとにぎりのかみのけ
一握の髪の毛
田中 貢太郎
田中 貢太郎의 一握の髪の毛(ひとにぎりのかみのけ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 6,548자 · 14화면
剃刀は畳の上に落ちた。
「それで、おれを殺すつもりか、この狂人」
章一は力を罩めて突き飛ばした。細君の体はよろよろとなって長火鉢と鼠いらずとの間へ往って倒れた。と、そこから苦しそうな呻きが聞えて来た。それは臓腑と臓腑を擦りあわすような呻きであった。
「恐ろしい奴だ、汝はそんな奴か」
脂肪の多い蒼白い肉体が章一の頭を掠めた。章一は目黒駅の片隅に人の視線を避けて己を待っている彼女のことを思いだした。
(もう、すぐ一時だ、痴なことをしている間におそくなった)
章一はすぐ出かけようとしたが、剃刀が気になるのでそれを拾った。
「こんな恐ろしい家に帰るものか、痴、かってにしろ」
章一は次の書斎と寝室になっている室へ往って高机の右の抽斗を開け、手紙や葉書の雑然となっている中へそっと剃刀を入れて、それから帽子を執って外へ出た。彼は一刻も早く目黒駅へ往きたかった。
初夏の明るい埃のたつ日であった。章一は平生のように額の寛い白い顔を左の方に傾げるようにして坂路をおりて往った。足にはゴム草履を穿いていた。坂の下には省線の電車があった。平生なら彼はその電車に乗るのであったが、時間がないのですぐそこに来た円タクに乗った。