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じんせいろんノート

人生論ノート

三木 清

三木 清의 人生論ノート(じんせいろんノート)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 71,023자 · 143화면

아오조라 문고

名誉心も、虚栄心と同様、社会に向っているといわれるであろう。しかしそれにしても、虚栄心においては相手は「世間」というもの、詳しくいうと、甲でもなく乙でもないと同時に甲でもあり乙でもあるところの「ひと」、アノニムな「ひと」であるのに反して、名誉心においては相手は甲であり或いは乙であり、それぞれの人間が個人としての独自性を失わないでいるところの社会である。虚栄心は本質的にアノニムである。

虚栄心の虜になるとき、人間は自己を失い、個人の独自性の意識を失うのがつねである。そのとき彼はアノニムな「ひと」を対象とすることによって彼自身アノニムな「ひと」となり、虚無に帰する。しかるに名誉心においては、それが虚栄心に変ずることなく真に名誉心にとどまっている限り、人間は自己と自己の独自性の自覚に立つのでなければならぬ。

ひとは何よりも多く虚栄心から模倣し、流行に身を委せる。流行はアノニムなものである。それだから名誉心をもっている人間が最も嫌うのは流行の模倣である。名誉心というのはすべてアノニムなものに対する戦いである。

発生的にいうと、四足で地に這うことをやめたとき人間には名誉心が生じた。