후리가나로 읽는 일본 고전
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れいじょうアユ
令嬢アユ
太宰 治의 令嬢アユ(れいじょうアユ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 5,736자 · 12화면
佐野君は、笑った。実に愉快そうに笑った。ざまを見ろという小気味のいい感じだけで、同情の心は起らなかった。ふと笑いを引っ込めて、叫んだ。
「血が!」
令嬢の胸を指さした。けさは脚を、こんどは胸を、指さした。令嬢の白い簡単服の胸のあたりに血が、薔薇の花くらいの大きさでにじんでいる。
令嬢は、自分の胸を、うつむいてちらと見て、
「桑の実よ。」と平気な顔をして言った。「胸のポケットに、桑の実をいれて置いたのよ。あとで食べようと思っていたら、損をした。」
岩から滑り落ちる時に、その桑の実が押しつぶされたのであろう。佐野君は再び、恥をかかされた、と思った。
令嬢は、「見ては、いやよ。」と言い残して川岸の、山吹の茂みの中に姿を消してそれっきり、翌日も、翌々日も河原へ出ては来なかった。佐野君だけは、相かわらず悠々と、あの柳の木の下で、釣糸を垂れ、四季の風物を眺め楽しんでいる。あの令嬢と、また逢いたいとも思っていない様子である。佐野君は、そんなに好色な青年ではない。迂濶すぎるほどである。
三日間、四季の風物を眺め楽しみ、二匹の鮎を釣り上げた。「おそめ」という蚊針のおかげと思うより他は無い。