후리가나로 읽는 일본 고전
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
原 民喜의 夏の花・心願の国(なつのはな)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 152,816자 · 310화면
だが、それはそれとして、妻も「衣裳戸棚」の旅の話を知っていた。あのような奇怪な絶望のはての娯しい旅へ出られたら、――それはこの頃二人に共通する夢でもあった。じりじりと押迫って来る何か不吉なものが、今にもこの小さな生活を覆しそうな秋であった。台所の硝子戸にドタンと風のあたる音がして、遠くの方にヒューッと唸る凩の音がする。電車が軋りながらすぐ近くの小駅に近づいて来る。不思議に外部のもの音が心に喰込んで来る。すると急に電灯のあかりが薄暗く感じられ、見慣れた部屋の壁の色がおそろしく冴えているのだ。ここには妻の一日の憂鬱がすっかり立籠っている。妻もまたこの二三年を病の床で暮し、来る日来る日をさびしく見送っているのだった。日によって、頬が火照ったり、そうして、その後ではきっと熱が高かったが、些細なことがらがひどく気に懸ることがある。かと思うと、ふと爽やかな恢復期の兆が見えたりして、病気は絶えず一進一退していた。寝たままで、女中のたつを口で使っていたが、おつかいから帰って来るたつは、変動してゆく外の空気をいつも妻に語りつたえた。そうして、妻の焦躁は無言の時、一際はっきりと彼の方へ反映して来るようであった。