일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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よるのくつ

夜の靴

横光 利一

横光 利一의 夜の靴(よるのくつ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 107,056자 · 213화면

아오조라 문고

この混雑の列車の中を、帰るだけが私にやっとだが、この人は、私のやろうとすることの十数倍のことをやろうとしている。帰って行くときのこの客の後姿を見ていると、横っちょに引っかけた蓑が飛ぶような迅さだ。あれなら十五里は今日中にやれそうだと思った。

私は小一里もある野路を火燧崎まで出かけた。山裾の入り組みが田の中へ複雑な線で入り浸っている。行く路はそれに随い海岸のように曲りうねっていて、霙の降っているその突端の岬に見える所が火燧崎だ。このあたりは古戦場だから多分ここから火を打ちかけたものだろう。家の一軒もない泥田の中に、ぼつりと一つ農家があり、それが温泉宿で、一ヵ月も水を変えない沸し湯のどろどろした汚れ湯が神経痛によいという。泥のような中から裸体の農婦の背中や腰が白い肌を見せている。そこの勝手元に私の訪ねる人は、どてらを着て炉の前に坐った六十過ぎの男であった。眼のぎろりと大きい、養子とは反対の太っ腹なむっつりした男で、垢と泥とでどす黒く見える懐の中から、すっきりとした外国製の煙草を一本抜き出した。悪く見ると山賊の親分で、善く見ると大道具の親方という風貌だが、向うも相手を誤ったと思ったらしく、不機嫌な様子で押し黙っている。