후리가나로 읽는 일본 고전
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
平林 初之輔의 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕(あるたんぼうきしゃのはなし)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 113,247자 · 229화면
するとその前に座ったのが、あとからわかったのですが、あの人だったのです。
クレオパトラの鼻がもう一分低かったら世界の歴史がかわったろうとパスカルという哲学者が言ったそうですが、あの時妾たちの椅子のどちらかが一つ隣だったら、妾たちの歴史もきっと変わっていたでしょう。妾とあの人とはきっと知らずにすんだでしょうし、国宝的な経済学者を、犬ころか何かのように簡単に殺さずにすんだでしょうし、妾も、あんな有頂天の幸福も経験しなかっただろうかわり、こんな、堪えきれない苦しみを背負わされずにもすんだのでしょう。
食事中いろいろな人がたって、ありとあらゆる言葉で帰朝者に賛辞をあびせていましたが、最後に、型どおり、帰朝者のために乾杯することになりました。妾は弱って、まごついてしまいましたが、それでも立ち上がって、麦酒のコップをとって(妾は女のくせに酒をいただくんです)おずおず前へ差し出しました。その時に妾の前で、同じように麦酒のコップをもって立ち上がったのがあの人だったのです。妾はその時はじめてあの人の顔を見たんですが、ちょうど妾の視線があの人の視線とぴたりと合ったのであわてて眼を伏せてしまいました。