후리가나로 읽는 일본 고전
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あやしのやかた
怪しの館 短編
国枝 史郎
国枝 史郎의 怪しの館 短編(あやしのやかた)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 81,915자 · 165화면
の身に左遷された。
ちょうどこの時分の事であった。欝勃たる覇気と忿懣とを胸に貯えた麟太郎は上野の車坂を本所の方へ騎馬でいらいらと走らせていた。燈火の点き初めた夕暮れ時で往来には人々が出盛っていた。人声、足音、物売りの叫び。やかましいほど賑やかであった。その時、騒然たる物の音を縫って鼓の音が聞こえて来た。麟太郎は思わず馬を止めて音のする方へ眼をやった。三十年前に一度見た姥の面のような顔を持った上品な老女が彼を見ながら鼓を打っているではないか。彼の心は静かに和み海のように胸が開けて来た。
翌日彼は召し出されて軍艦奉行を命ぜられたのである。
二
その後麟太郎はもう一度だけ鼓の持ち主に邂逅った。明治元年三月十三日のしかも日中のことである。この頃大江戸は釜で煮られる熱湯のように湧き立っていた。十五代続いた徳川家にようやく没落の悲運が来て、将軍慶喜は寛永寺に屏居し恭順の意を示している一方、幕臣達は隊を組んで安房、下総、会津等へ日に夜に脱走を企てる。征討大総督有栖川宮は西郷隆盛を参謀として東山北陸東海の、三道に分れて押し寄せて来る。二百数十年泰平を誇ったさすが繁華な大江戸も兵燹にかかって焼土となるのもここしばらくの間となった。