후리가나로 읽는 일본 고전
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おんをかえすはなし
恩を返す話
菊池 寛
菊池 寛의 恩を返す話(おんをかえすはなし)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 9,018자 · 19화면
敵を倒すことも、自分が斬られることも、念頭にない。ただ無性に太刀を振ることが、宗教的儀礼の一部であるように見えた。
甚兵衛も、かかる老人に対しては、なんらの闘志もなかったが、余りにしつこくつきまとうので、仕方なく一刀を肩口に見舞うた。
老人は、血を見ると、一種の陶酔から覚めて命が惜しくなったらしく、急に悲鳴を挙げながら逃げ出した。すると甚兵衛もそれに釣られて、十間ばかり追いかけようとした途端、一人の壮漢が彼の行手を遮ったのである。
その男は、南蛮ふうの異様の服装をしていた。そして甚兵衛には解せぬ呪文を高らかに唱えながら、太刀を回して、切って掛った。甚兵衛は中段で受け止めたが、相手の腕の冴えていることはその一撃が十分に証明した。甚兵衛は朝からの戦いでかなり疲れていて、鎧の重さが、ひしひしと応えるのに、その男は軽装しているために、溌剌たる動作をなした。おまけに、太刀を打ち合うごとに、その男が胸に吊している十字架が甚兵衛の目を射た。彼はその十字架に不思議な力が籠っているように思って、一種の魅力をさえ感じた。甚兵衛の太刀先を相手が避けて、飛び退ったはずみに、二人の位置が東西になったと思うと、敵の十字架に、折柄入りかかる夕日が煌いた。