후리가나로 읽는 일본 고전
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
吉川 英治의 新書太閤記(しんしょたいこうき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 176,911자 · 353화면
はからずもその記憶が役だって、画稿の線のひとつひとつになろうとは。
(何しても、惜しい人ではあった)
と、彼が回顧される以上に、尼もこよいは、その兄にかしずいていた栗原山の春の夜をおもい出しているのであろう。それかあらぬか、尼はめずらしく、
「お客人に、何の御馳走もなさすぎますから、せめて尼の琴なりおきかせしましょうか」
と、めずらしくも云い出したので、於通も、
「え。ほんとに」
と、興がって、さっそく一面の琴をかかえてきた。そして、
「禅尼さまのお琴は、それはそれはお上手なんです。秘曲を極めておられますから。――けれど、たれがせがんでも、めったにお弾きになったためしはありません。今夜はよほど、どうかしていらっしゃるんですよ」
と、友松に紹介した。そして彼女自身も、おもわぬ倖せに会ったように、座をすべらせて、奏で出づる秘曲をこころ澄まして待ちもうけた。
琴を前に、絃の調べをしつつ、そのあいだに、
「わたくしよりも、亡くなった兄のほうが、琴は上手でございました。栗原山の山住居に、わたくしが弾き、また兄が弾き、月の夜の更けるのも忘れたことがありました」
彼女のまぶたには、その兄が、その頃のまま、もう見える心地がしているらしい。