후리가나로 읽는 일본 고전
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
横光 利一의 旅愁(りょしゅう)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 576,941자 · 1138화면
だけどもう御不用のころかと思ったわ。」
天井に頭の閊える橇の中で、槙三は縮んだままいつも黙って笑っていた。矢代が何科かと訊ねると、
「理科です。」とひと言槙三は答えた。
「御専門は。」とまた矢代は訊ねた。
「数学です。」
「ほう、それは。」矢代は何ぜともなくそう云ってから、これは本ものの科学派だと思い暗い幌蔭で自然と微笑が洩れて来た。
ときどき脇板から肱が脱れ落ち、矢代の下顎が千鶴子の肩に突きあたるほど橇が揺れた。路傍の崖の下は川だったから踏み転がる危険もあった。
「恐ろしいわね、大丈夫かしら。」
千鶴子も槙三の肩により掴まって云った。灯のまったく見えなくなった狭間の底を、橇の小さな洋灯だけぐらぐら覚束なげな足取りで踉けた。
「僕も初めて来たときは、このあたりで地獄の底へ行くように思ったんだが、着いてみると、この方が来た気持ちがするんですよ。まだまだ揺れる。」
矢代のこう云っているときでも橇は左右に揺れつづけ、風が幌を鳴らせてはためき、その隙から鋭く雪が舞い込んだ。矢代はふとまた橇箱の上で、例の千鶴子が風とともに飛び狂っていそうな気持ちに襲われると、外が闇であるだけ鳴る風に一層敏感になり、それがまたさも狂わしげにばたばた翅を屋根に打ちつけるように思われた。