후리가나로 읽는 일본 고전
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
横光 利一의 旅愁(りょしゅう)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 576,941자 · 1138화면
矢代はそういう千鶴子の微笑を初めて見たと思い、何か確実な彼女の心を掴んだ安心を得た思いで、椅子に対っている槙三の顔をまた眺めるのだった。しかし、槙三は、そんな事柄には一向興味の動かぬらしい穏やかな顔つきで、赧い下唇を突き出したまま、卓子の上に散っている矢代の書類を見ていた。矢代は千鶴子がよく気のつく上の兄の由吉を連れて来ずに、槙三を選んだ理由もよく分った。
「あなた風邪はひきませんでしたか。昨夜は少し冷えましたからね。」
朝の浴槽の中で小さく咳いた千鶴子の咳声を思い出し、矢代は槙三にそう訊ねた。
「いえ別に。」と槙三は云ってから、「宗教を研究してらっしゃるんですか。」と訊ね返して笑った。
「宗教というほどのことはないので。」
矢代は笑いながら答えてから、むしろ、宗教よりあなたの専門の科学の方で、とそう云いたくも思った。が、昨夜食事のさい危く二人のもつれかかった話題のことも考えられたので、またこのときも黙るのだった。何か一口いえば、火の発するものを無数に抱いている今の青年の間だと思うと、口口に云いたいことを圧え黙りつづける工夫も、これで並みたいていのことではないと矢代は思った。