후리가나로 읽는 일본 고전
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せんこうてい「ハビヒツブルグ」
潜航艇「鷹の城」
小栗 虫太郎
小栗 虫太郎의 潜航艇「鷹の城」(せんこうてい「ハビヒツブルグ」)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 132,395자 · 263화면
微風は、椰子花の匂いを混ぜた海の香りを、余に向ってまともに吹きつけた。
しかし、そうしているうちに、ふと余の瞳に映じたものがあって、その衝動の苛烈さには、思わず双眼鏡を取り落したほどだった。
それから余は、狂わんばかりに夢中になり、その双眼鏡を、かわるがわる船員に貸し与えたのであったが、いずれも血の気を失った。
余は幼少のころ、霧深い大気の中で、樹木を妖怪と信じたこともあったが、この場合は断じてそうではない。しだいに余の魂は、現実に戻るのを嫌うようになった。そして、ある詩の一句を口誦みながら、ひたすら幻想の悦楽に浸っていたのである――それは、眼前の渚に遊ぶ一個の人魚を見たからであった。
上半身は、それは美しい女体であるけれども、腰から下は暗い群青色に照り輝いて、細っそりと纏った足首の先には、やはり伝説どおりの尾鰭があった。
彼女は、猫のような優やかさで動いてゆき、身を差し伸べるときには藻草のような髪が垂れ、それが岩礁の中で、果物の中の葉のように蒼々と見えた。
そこで余は、さっそく島に向ったが、暗礁多く、上陸したのは翌朝だった。
ところが、意外のことに、人魚は一夜のうちに何処かへ消え失せ、余は二人の日本青年と、これも嬰児を二人拾い上げたにすぎなかった。