후리가나로 읽는 일본 고전
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みおつくし
澪標・落日の光景
外村 繁
外村 繁의 澪標・落日の光景(みおつくし)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 130,889자 · 268화면
日を愛しむ
妻、素子が退院し、二ヵ月振りでわが家へ帰ったのは、四月中旬のことである。曇った日で、門前の吉野桜の花はすっかり散り落ち、枝には赤い萼が点々と残っている。素子は桜の梢の方へ目を遣ってから、門を入った。玄関では、満八十二になる、私の母が背を円くして、その妻を迎えた。私は運転手と自動車から荷物を運んだ。
素子は乳癌にかかった。その上、発見が遅れたため、癌は腋下から頸部にまで転移してい、二度の手術と、放射線の治療を受けた。しかし放射線の照射量が人体にかけ得る限度に達したので、一まず退院が許されたまでである。素子の顔に格別喜色が浮かばないのも当然である。
現在の医学では、癌に関する限り、全治ということを考えてはならないのかも知れない。先年、私も上顎腫瘍にかかり、入院して、放射線の治療を受けた。以来、既に二年以上になる。しかし未だに病院通いを止めることは許されない。妻もあの凄惨な癌病院から辛うじて逃げ帰ったが、漸く目前の危機を脱し得ただけである。あの恐しい奴は妻の体内で、暫く息を潜めているに過ぎないのかも知れぬ。いつまた暴れ出さないとも限らない。
しかし私はやはり嬉しかった。