후리가나로 읽는 일본 고전
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いちろうじん
犬田卯短編集二
犬田 卯
犬田 卯의 犬田卯短編集二(いちろうじん)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 51,383자 · 103화면
しかし彼はいかなることをされようとも、決して人に危害を加えるようなことはないのである。彼は家というものももはや失い、主として山野に寝ね、山野に彷徨して、虫けらを食って生存しているのだが、時々、里へ出現ましまして座像化したり、立像化したりをやらかすのである。
時にはまたひょっこり農家を訪れることもあるのであった。しかしそれは食を乞うためではなかった。彼は生ものを好み、煮沸したものは好まないらしい。そしてそういう生のままのものなら、何もわざわざ人家を訪れなくても、野良にいくらでも作られている。実際、虫けらもおらず、作物もない冬季ででもなければ、彼は人がやっても、握り飯やふかし芋は口にしなかった。五十歳に近い彼が若者のように漆黒の毛髪を持ち、三日間も立像化するエネルギーを把持しているというのは、全くこの生ものの故かも知れなかった。
兼さんが、かかる生活をはじめてから、もう二十五年にはなろう。彼には一人の妹がある。東京で女中奉公しながら、可哀そうな兄貴の世話をしてくれと言って、村の親戚へ、時々五円十円と送って来るそうである。しかし山野いたるところに青山あり、生存方法の存在する兼さんにとって、そうした資本主義社会では神様である重宝なものも、何の役にも立たず、また必要もない。