후리가나로 읽는 일본 고전
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
岡本 綺堂의 玉藻の前(たまものまえ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 130,703자 · 261화면
彼が眼鼻を一つにして苦しんでいるのを、実雅はいよいよ妬げに睨んでいたが、ふと気がついたように庭先きへ眼をやった。
「ほう。えらい嵐になった」
まことに凄まじい嵐であった。おぼろ月はそれに吹き消されたように光りを隠して、闇をゆるがすような嵐の音がどうどうと聞こえた。花に嵐は珍しくないが、これまた疾風のような怖ろしい勢いで、山じゅうの桜を一度に落とそうとするらしかった。鞍馬の天狗倒しがここまで吹き寄せかとも思われて、座敷じゅうの笑い声は俄にやんだ。女たちは顔を掩って俯伏した。嵐は座敷の内へもどっと吹き込んで、あらん限りのともし灯を奪ってゆくように、片端からみな打ち消してしまった。
真っ暗ななかで男たちは息をのんだ。女たちはおもわず泣き声をあげた。外の嵐はまだ吹きつづけて、黒い雲のひとかたまりが家根の上へ低く舞いさがってきた。人間の限りない歓楽を天狗が妬んで、人も家も一緒につかんで眼の前の谷底へ投げ込もうとするのではないかとも恐れられた。そのなかでも心のきいた老人は呼んだ。
「ともかくも燈火を早う。灯をともせ」
その声は嵐に吹き消されて遠くきこえなかった。