후리가나로 읽는 일본 고전
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うつくしきつきよ
美しき月夜
宮本 百合子
宮本 百合子의 美しき月夜(うつくしきつきよ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 9,063자 · 18화면
或は、列車という意識さえ、彼の心には浮んでいなかったといっても好いほどの驚くべき余白(ブランク)が、幸福で身慄う彼の、形の好い頭のうちに生じていたのである。
興奮が産んだ、この無意味な意識の余白は、いつかマーガレットにも感染していた。彼女も彼と同様の放心状態に在った。まるで日向で草でも見るように、
「取れないだろうかね」
と呟きながら、跼んで良人の、月光に白く光る背中に手を置きながら、彼女は時間を忘れた平静さで、そろそろと足を動しに掛ったのである。しかし、重い荷車の車輪で圧拉げられた分厚な板と、不動の軌道との僅かな間隙に、ほんとの力の機勢(はずみ)で喰いこんだ踵は、体を前後に揺るくらいのことでは、とうてい抜けるものではない。胴で括れて、末端が広く銀杏形に開いた女の高い踵は、恰も運命の係蹄の如く、微妙な一点で、彼女を完全に生捕ってしまったのである。二三度扶(こびっ)てもカタリとも動かない強固(ファームネス)さに、或る漠然とした、得体の知れない焦躁が二人の心に湧き上ったときである。今までただ洞穴のように真暗く見えていた番小屋の中から、一人の男が小さい手提洋燈を振りながら、恐ろしい惶しさで馳けつけて来た。