일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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おに

聴雨・蛍 織田作之助短篇集

織田 作之助

織田 作之助의 聴雨・蛍 織田作之助短篇集(おに)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 19,483자 · 41화면

아오조라 문고

ところが、ふとそれが出来なくなってしまったのだ。おかしいと新吉は首をひねった。落ちというのは、いわば将棋の詰手のようなものであろう。どんな詰将棋にも詰手がある筈だ。詰将棋の名人は、詰手を考える時、まず第一の王手から考えるようなことはしない。盤のどのあたりで王が詰まるかと考える。考えるというよりも、最後の詰み上った時の図型がまず直感的に泛び、そこから元へ戻って行くのである。そして最初の王手を考えるのだが、落ちが泛んでから書き出しの文章を考えるという新吉のやり方がやはりこれだった。ところが、今は勝手が違うのだ。詰み上った図型が全然泛んで来ない。書き出しの文章は案外すらすらと出て来たのだが、しかし、行き当りばったりの王手に過ぎない。いや、王手とも言えないくらいだ。これはどういうわけであろうと考えて、新吉はふと、この詰将棋の盤はいつもの四角い盤でなく、円形の盤であるためかなとも思った。実は新吉の描こうとしているのは今日の世相であった。

世相は歪んだ表情を呈しているが、新吉にとっては、世相は三角でも四角でもなかった。やはり坂道を泥まみれになって転がって行く円い玉であった。