후리가나로 읽는 일본 고전
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たこのごときもの
蛸の如きもの
豊島 与志雄
豊島 与志雄의 蛸の如きもの(たこのごときもの)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 10,085자 · 21화면
淀みには陰性が住み、流れには陽性が住む。東京のような戦災都市では、その差がまた甚しい。少しく行けば、たちまちにして喧騒の巷である。
電車の響音、自動車の警笛、群集の靴音、それらを超えて空中に鳴り響く広告塔のラウド・スピーカー。これはまさに陽性的暴力だ。然しこれらの暴力の干渉外に、ネオン・サインの射照外に、ひっそりした隅々がある。ひっそりしてはいるが、然し、それは盲点ではない。そこに、酒の酔いと夢と哲理とがとぐろを巻く。
その一つの、杉小屋には大勢の常連が集まっている。経営者の好みで、焼けビルの一階の広間を、日本酒に縁のある杉の木材で改装し、杉で作ったがらくた道具を置き並べた酒場だ。
常連だけで殆んど満員である。ここには、バンドはもとより無い。ラジオも蓄音器もかけない。各自が勝手なことを声高に饒舌っている。ギリシャ哲学、近代政治、労働組合、アプレ・ゲールの理念、なんでも聞かれないものはない。ところが、ふしぎなことには、それらの高声な論議も、すーっと宙に吸われて、広間の空気はいやにひっそりしているのだ。コンクリーの四壁の音響反射のわるいせいか、天井の高いせいか、どのグループの人声も宙に消えて、ただ、饒舌ってる人のゼスチュアーだけがあとに残る。