일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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いこう

遺稿

水上 滝太郎

水上 滝太郎의 遺稿(いこう)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 552자 · 2화면

아오조라 문고

この無題の小説は、泉先生逝去後、机辺の篋底に、夫人の見出されしものにして、いつ頃書かれしものか、これにて完結のものか、はたまた未完結のものか、今はあきらかにする術なきものなり。昭和十四年七月号中央公論掲載の、「縷紅新草」は、先生の生前発表せられし最後のものにして、その完成に尽くされし努力は既に疾を内に潜めいたる先生の肉体をいたむる事深く、その後再び机に対われしこと無かりしという。果して然らばこの無題の小説は「縷紅新草」以前のものと見るを至当とすべし。原稿はやや古びたる半紙に筆と墨をもって書かれたり。紙の古きは大正六年はじめて万年筆を使用されし以前に購われしものを偶々引出して用いられしものと覚しく、墨色は未だ新しくしてこの作の近き頃のものたる事を証す。主人公の名の糸七は「縷紅新草」のそれとひとしく、点景に赤蜻蛉のあらわるる事もまた相似たり。「どうもこう怠けていてはしかたが無いから、春になったら少し稼ごうと思っています。」と先生の私に語られしは昨年の暮の事なりき。恐らくこの無題の小説は今年のはじめに起稿されしものにはあらざるか。

雑誌社としては無題を迷惑がる事察するにあまりあれど、さりとて他人がみだりに命題すべき筋合にあらざるを以て、強てそのまま掲出すべきことを希望せり。