후리가나로 읽는 일본 고전
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きんろう
金狼
久生 十蘭
久生 十蘭의 金狼(きんろう)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 89,438자 · 179화면
山瀬は起きあがって草の上にあぐらをかくと、微笑をうかべながら、
「君がなにを言いたいのか、よく判ったよ。……俺に言わせると、危険なのは君の情況でなくて君が本気で細君を愛しはじめたことなんだ。君がひとりで逃げようとするなら、それは実に易々たる問題なんだからな。……むかし、虚無の向うに何があるかという幼稚な議論をしたことがあったな。……君は虚無の向うに虚無の深淵だけだ、といった。僕は虚無の向うに愛がある、といった覚えがある。……覚えているか」
久我は山瀬の顔を見つめながら、激したような声で、
「よく覚えている。中村君、僕ははじめ……」
山瀬は手をあげて遮りながら、
「君の恋愛の告白なんかきいても仕様がない。それは、よせ。……それで、穂高までどうしてゆくか。そんな切迫しているのに東京を抜けだす自信があるか」
久我が昂然と言いはなった。
「ある。……自信ではない。意志だ。……それに、僕はいま頓悟を得た。旅費にこだわっているから動けないのだ。歩くつもりなら融通無碍だ。僕は歩いてゆく。……どこまでも歩いてゆく」
山瀬は憐れむように、ちらりと久我の顔を見かえすと、うつむいて黙然と煙草を喫いだした。