후리가나로 읽는 일본 고전
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ふうちそう
風知草
宮本 百合子
宮本 百合子의 風知草(ふうちそう)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 44,107자 · 88화면
一九四二年の夏、東京は六十八年ぶりとかの酷暑であった。前年の十二月九日、真珠湾攻撃の翌朝、そういう戦争に協力することを欲していない者と見られていた数百人の人々の一人として、ひろ子も捕えられ、珍しい暑い夏を、巣鴨の拘置所で暮した。皮膚の弱いひろ子は、全く通風のない、びっしょり汗にぬれた肌も浴衣もかわくということのない監房の生活で、毛穴一つ一つに、こまかい赤い汗もが出来た。医者は、その汗もに歯みがき粉をつけておけと、云った。しまいに掌、足のうら、唇のまわりだけのこして、全身がゆで小豆の中におっこちた人形のようになった。そして、監房の中で昏倒し、昏睡状態で家へ運ばれた。
二日ほどして意識が恢復しはじめた。最初の短い覚醒の瞬間、ひろ子は奇体な、うれしいものを見た。それは、自分に向って心から笑っている吉岡の顔であった。吉岡が、特徴的に太い眉根をうごかして、浅黒い顔に白い歯を見せて笑いかけている。その顔が、丁度アヒルの卵ぐらいの大さに見えた。そんなに小さく、そんなに遠いところにあるのに、それは吉岡にまがうかたなく、実に鮮明に、美しく見えた。ひろ子は、うれしさに声をたてて笑った。