후리가나로 읽는 일본 고전
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さるすべり
さるすべり
山本 周五郎
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N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 12,095자 · 24화면
「ならん」治部介はきめつけるように云った、「どんなことがあっても城門からそとへ出ることはならん」「しかしあのままではこんどこそ本当に射ち殺されてしまいます」「うろたえるな」と治部介は叫んだ、「この合戦のさなかで、それがおまえには珍しいことなのか。われわれの役目はこの城をまもりぬくことにある、つまらぬことに気をとられて本分のあるところを忘れるな、もどれ」
兵は身をふるわせながら戻った。しばらくすると敵が出て来たとみえ、城壁の上に伏せた銃が火蓋を切った、敵も応射した、このあいだに少しずつ這い進んで来た例の女は、堀端まで来て動かなくなった、「もうひと息だ、元気をだせ」城壁の上から兵たちが喚いた、しかし女はもう身動きもせず、かぶっていた蓆の端が、時おり風ではたはたと地を打つだけだった、そして日が暮れた。
その夜半だった、治部介は独りでそっと大手門からぬけだし、堀端に倒れていた女をすばやく城の中へ抱きいれた、女は重傷だったが、まだ意識はあった。治部介は二の丸下の草地へいってそっとおろした、そこには大きな猿滑の樹があり、傘のようにさしひろげた枝はいまみごとな花ざかりである。