후리가나로 읽는 일본 고전
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
永井 荷風의 つゆのあとさき을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 74,725자 · 148화면
女はスタスタ交番の前をも平気で歩み過るので、市ヶ谷の電車停留場で電車でも待つのかと思いの外、八幡の鳥居を入って振返りもせず左手の女阪を上って行く。いよいよ不審に思いながら、地理に明い清岡は感づかれまいと、男の足の早さをたのみにして、ひた走りに町を迂回して左内阪を昇り神社の裏門から境内に進入って様子を窺うと、社殿の正面なる石段の降口に沿い、眼下に市ヶ谷見附一帯の濠を見下す崖上のベンチに男と女の寄添う姿を見た。尤もベンチは三、四台あって、いずれも密会の男女が肩を摺寄せて腰をかけていた。清岡はかえって好い都合だと、桜の木立を楯にして次第次第に進み寄り、君江がどんな話をしているかを窺い、同時に相手の男の何者たるかを見定めようと試みた。
清岡はいかなる作者の探偵小説中にも、この夜の事件ほど探偵に成功したはなしは恐らくあるまいと、殆どその瞬間には驚愕のあまり嫉妬の怒りを発する暇がなかったくらいであった。男はパナマらしい帽子を冠り紺地の浴衣一枚、夏羽織も着ず、ステッキを携えている様子はさして老人とも見えなかったが、薄暗い電燈の灯影にも口髯の白さは目に立つほどであった。