후리가나로 읽는 일본 고전
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やもりものがたり
やもり物語
寺田 寅彦
寺田 寅彦의 やもり物語(やもりものがたり)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 4,340자 · 9화면
気を付けていたにもかかわらず一度も柱を登る姿を見た事がない。日の暮れるまでは影も見えず、夜はいつの間にか現われてガラスに貼り付けたように身動きせぬ。朝出がけに見るともう居ない。夜一夜あのままに貼り付いていたのが朝の光と共に忽然と消えるのでないかと云うような事を考えた事もある。
暗闇阪を下りつめた角に荒物屋がある。この店はちょうど自分が今の処に移る少し前に新しく出来たそうである。毎日通り掛りに店の様も見れば、また阪の方に開いた裏口の竹垣から家内の模様もいつとなく知られる。主人はもう五十を越した、人の好さそうな男であるが、主婦はこれも五十近所で、皮膚の蒼黄色い何処となく険のあるいやな顔だと始め見た時から思った。主人夫婦の外には二十二、三の息子らしい弱そうな脊の高い男と、それからいつも銀杏返しに結うた十八、九の娘と、外には真黒な猫が居るようであった。亭主と息子は時々店の品物に溜まる街道の塵をはたいている。主婦や娘は台所で立働いているのを裏口の方から見かける事があるが、一体に何処となく陰気なこの家内のさまは、日を経るに従うて自分の眼に映る。主婦は時々鉢巻をして髪を乱して、いかにも苦しそうに洗濯などしている事がある。