일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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いちのくらさわ

一の倉沢

久生 十蘭

久生 十蘭의 一の倉沢(いちのくらさわ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 6,237자 · 13화면

아오조라 문고

救援隊などといわれても、そんなものを組織する宛は菱苅にはなかった。

菱苅が大学にいるころ、自負心と冒険心から、谷川岳の幽の沢の奥壁ルンゼや、滝沢の上部をやったことがあるので知っているが、谷川岳の救援は、四組ぐらいのパアティに別れ、たがいに連絡をとりながらやらなくてはならないので、一の倉沢やマチガ沢の岩場をいくどもやった練達でなくては無意味なのだ。

「それはともかく、さしあたって分担金を都合しなくてはならないのだが」

恥を忍んで、パアトナーの救援隊に便乗するとしても、谷川岳では、遭難者を一人ひきおろすのに、最低、五万円はかかる。そのほか、旅費と山の家の滞在費と地元への謝礼で、一万円は軽く飛んでしまう。来年は停年で、三十万円近くの退職金の積立があるが、会社の規定で、貸出しは三万円が限度になっている。あとの三万円をどこからひねりだせばいいのか。

「また、はじまった」

ショックを受けたり神経を緊張させたりすると、たちまちというふうに肝臓に違和が起る。

右の脇腹をなだめるように撫でながら、菱苅はむかしのザイル仲間のことをなつかしく思いだした。三十年前なら、遭難のニュースを聞くなり、頼むまでもなく誘いあって救援に行ってくれるだろう。